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2006年6月16日 「四国ツアー」
午後一時三十分発、高知行きの飛行機に乗ろうと待っていた人々にアナウンスがあった。”高知空港の天候次第では、又、羽田にひきかえすこともありえるので、その点御了承下さいませ。”エーッ!!何だって!!寝耳に水だ。
今迄何回も飛行機を利用して来たが、台風の為に引き返すなどと言われたことは一度もなかった。(イベントが中止になったことは何度もあるが・・・・)。ただ単に遭遇しなかっただけのことかも。まいったナ〜、新幹線で行くにしても、夜の七時までに高知からさらに二〜三時間はかかる中村市にたどりつけるはずがない。旅慣れた自分にも、こればかりはどーしようもなく、運を天に任せ、ヒコーキに乗るしかない。
テレビの天気予報で台風が接近してきたことは知っていたが、まだ間に合うだろうと軽く考えていたのだ。
「Keep on」の中で、人生は大変との出会いだ、と書いたが、またしてもだ。
それにしてもヒコーキの小窓から見える世界は、素晴らしい快晴で、まさか、下の雲の中は大雨ザンザカとは想像もできない程だ。
やがてぶ厚い雲の中に入ると、一転して、暗くどんよりと視界がきかなくなった。機長のアナウンスだ。
”只今、高知空港は厚い雲におおわれ、視界ゼロであり、しばらく様子を見るために旋回して待機します。”
もう、神様にどーにかして下さいませ、とお願いするしかない。五分程すると女性の声。”皆様、風が止みました。着陸しますのでシートベルトをお締め下さい”ウワーオ、よかった。うー、助かった〜〜。
小雨のパラつく空港から、高知駅行きのバスに乗り込む。ところが町中に入ったとたん、それはそれはもの凄いドシャ降りに変わり、高知駅に到着した時はピークに達し、駅はものすごい数の人々でごったがえしていた。
学校帰りの学生たちが圧倒的に多かった。改札口では汽車の復旧のメドがたたず、ペコペコと駅の職員が頭を下げていた。バスも運転を見合わせているという。
中村市の主催者に電話をかけると、ライブの前売りは全部売れているという。もう行くしかない。でも、どーやって?駅の案内のところで、タクシーで行くとしたら、ときくと、三万円位はかかりますと言う。三万円ネ。うーん。三万円ね・・・・。よし、腹を決めよう。タクシーで行くしかない。
タクシー乗り場で”すいませんが、中村まで行ってもらえないでしょうか”と声をかけると”あー、行きますよ。二時間半位はかかりますヨ”豪雨の中、車はたのもしげに走り出した。
「お客さん、それギターですよネ。中は何ですか?」
「あー、ギルドです。」
「ハードケースだからマーチンかなと思ったんで・・・。」
「運転手さん、ギター弾くんですか?」
「イヤ、イヤ、ほんのちょっとですよ。このあいだレズリーを十万円位で売っちゃったんだけど、あのメーカー、もう、作って、いないんですよネ」
「エッ!詳しいですネ。実は、東京のバンド仲間のキーボードがレズリー、修繕して、今でも使ってるんですよ。」
「プロコロハルムの青い影、いいですよネー」
(プロコロハルム・・・・三十年以上も昔のバンドの名前が自然に口から出てくるなんて・・・このおっさん・・・)
「お客さん、失礼ですが、お名前は何というんですか?」
「エー、ミナミ・マサトってんですが・・・」
「あー、昔、きいたことがある、ある、その名前。ヒット曲は何でしたかネ〜」
「ヒット曲、ないっすよ。余り売れなくて・・・でも、こうして、まだ現役やってるんです」
さァ、こうなると話が止らない。豪雨も止らない。俺半分、運ちゃん半分の割合で喋りまくっていくうちになんだか昔からの友だちみたいなフレンドリーな雰囲気になってきた。
はじめは、運転手さんと呼んでいたが、小笠原という名前が目に入ったので、途中から小笠原さんに変わり、次には小笠原くん、になり、次に小笠原ちゃんになり、最後は小笠原などともう、すっかり友達みたくなってしまった。
タクシーの料金メーターが二万五千円になったとたん、彼はカチャッとメーターを下ろし、「あとは、おまけ」だって。二時間半が、アッというまに過ぎていった。雨足も弱まり、七時頃中村駅まで迎えに来てくれた主催者に会えた。小笠原クンは、最後に後ろを振り向き、ニコッと笑顔をみせた。硬い握手をした。
「女房と別れて、今、独り身だから、高知に来たら、泊まれますから、いつでも、どうぞ」
そう言って、彼は、又、高知へもどって行った。
僕はコーフン状態にあり、とても普通のライブが出来そうになく、一曲目から、アドリブで、羽田からの経緯をトーキングでやっちまった。
お客さんたちの盛り上がったこと!誰かがカンパ袋をまわし始め、タクシー代の足しにと渡してくれた。いやー、何と言ってよいのか、高知は、実に人情あるところだ。
お客さんは、最後まで、オガサワラをたたえていた。
僕も君のこと忘れないよ。もし、君が、このダイアリーを読んだら、是非、メールを下さい。忘れないで。
